映画評論家 町山智浩が聞く!
『ストレンジ・ダーリン』
JT・モルナー監督インタビュー
全文掲載

ご挨拶
  • 町山智浩(以下、町山):
    『ストレンジ・ダーリン』大好きです。
  • JT・モルナー監督(以下、監督):
    ありがとう。
  • 町山:
    驚きの連続で、面白かったです。そして美しかったです。
  • 監督:
    ありがとう。美しい。とても大切なことですね。
  • 町山:
    ええ、とても美しく、エモーショナルでもありますね。
  • 監督:
    嬉しいです。
フィルム撮影について
  • 町山:
    この映画にはたくさんのどんでん返しやひねりがありますが、最初のサプライズは、本編の冒頭で出てくる「35mmフィルムで撮影された」というタイトルカードですね。どうかしてますよ!
  • 監督:
    フィルムがあまり使われなくなってきているこの時代に、映画制作者ではない人たちやそれを目指している人たちにも、この映画のルック(見え方)が好きなら、なぜそう見えるのかを知ってもらうことが重要だと思ったんです。
    そして、フィルムで撮影するために1億ドルもの予算は必要ないということを皆さんに知ってもらいたくて。『ストレンジ・ダーリン』は非常に低予算の映画でしたから。
    あのタイトルカードが気に入らない人もいるでしょうがあれはメーカーの広告ではないし、僕自身の広告でもありません。フィルムの広告なんです。
    僕はフィルムをとても信じているし、とても愛している。 そして、僕たちがこの小さな予算でフィルムを使っていることを知ってほしい。
  • 町山:
    でもフィルム撮りは反対されたでしょう?
  • 監督:
    ああ、そうですね。実際、多くの資金提供者、プロデューサー、スタジオが、フィルム撮りに反対しました。ここ2、3年、あるいは5年で、フィルム撮影は素晴らしい復活を遂げ、反発も少なくなったんですが。
    今年のアカデミー賞を見ても、作品賞を受賞した『ANORA アノーラ』はフィルム撮影だし、ゴールデングローブ賞を受賞した『ブルータリスト』もフィルムです。
    主要な賞は、撮影賞を含め、フィルムで撮影された映画でした。
    現在、大作映画の多くもフィルムで撮影されています。確かにデジタルのクオリティが上がり、誰もがデジタルで撮影するようになった時期がありました。2010年から2017年までですかね。
    でも、突然、人々はフィルムがいかに魔法のようで、再現できないかを思い出し始めたんです。
    そして今は、僕がフィルムで撮影することを知っても、誰も異議を唱えない
    『ストレンジ・ダーリン』が好きだという事実と映画全体の流れが少し変わったという事実が大いに関係していると思います。それは素晴らしいことです。
    次回作では、冒頭にフィルムで撮影されたことを言う必要がなくなっているかもしれませんね。そうなることを願ってます。
映画の着想について
  • 町山:
    『ストレンジ・ダーリン』は特に冒頭が信じられないくらい美しかったです。スローモーションで女性が走っていて、真っ赤なスクラブ(看護師服)?を着て、その彼女は泣いている。そして髪の金色や森の緑のコントラストなど。とても芸術的でした。
  • 監督:
    ありがとう。
  • 町山:
    あのオープニングはどうやって思いついたのですか?
  • 監督:
    映画のアイデアとして最初に浮かんだのは、あのオープニングでした。病院のスクラブを着た窮地に陥った女性が森の中を走る姿で、それをスローモーションで、さらに望遠レンズで撮影しなければならないと確信しました。そして「Love Hurts」という曲が流れることもわかっていた、なぜだか...それが種となって脚本が育っていったんです。
    この女性が誰なのか。彼女は何かの悪者に追いかけられているんだろうけど、どんな物語にしたいのかわからなかった。でも、映画のオープニングにはあの映像が必要だとわかっていた。何カ月も何カ月も考えているうちに、ホラー映画の結末が始まりとなる物語にしたいと思った。
    それはどんな物語だろうと考え続けました。彼女が殺人鬼から逃げ切った翌日を描くのか、どうなるのかさえも、わからなかった。ある日、ロサンゼルスのサンタモニカの山々をハイキングしているときにひらめくまでね。ここから、どうなっていくか浮かんできて家に帰って脚本を書いたんです。
    この映画はとても視覚的な方法で僕の中に入ってきました。だから、どんな色を使いたいかとか、カメラはどんな動きをするかとか、全部分かっていたんです。この映画は発想もデベロップメントもとても視覚的でした。
  • 町山:
    他にも色使いもすごく素敵ですね。ペンキ代にかなりお金をかけているなと思いました。ドアの周りやモーテルの植木鉢とか。
  • 監督:
    ああ! 青く塗ったね。
    ええ、ジョヴァンニ・リビシと僕がルックを開発するとき、具体的に考えなければと思ってプロダクション・デザイナーのプリシラ・エリオットに会って、一緒にたくさんの映画を観に行きました。
    最初に観たのはデヴィッド・リンチ監督の『ロスト・ハイウェイ』でした。映画館の試写会で観たんですが、それがいかに色彩を厳しく制御しているか、二人で話したんです。そして、僕たちはこの作品の最初の段階からプロセス全体を通して明確に色彩をコントロールしようと決めたんです。
    本作の中で、駐車場が車でいっぱいになっても、3次色(複数の色を混ぜた色)、例えば紫のような色の車は絶対入れないようにしました。自然界に由来するものでない限り、緑色も使わない。プリシラの美術監督で僕たちは色を厳しく管理しました。
    モーテルの部屋でも、すべてのものを常に特定の色で統一しました。ある時は赤、ある時は青を武器にすることに決めたんです。
  • 町山:
    全編で原色を多用していますが、レディは真紅、デーモンの服装は常に黒で、トラックも黒ですね。
  • 監督:
    各キャラクターや特定の場面に特定の色を割り当てたんです。
ジョヴァンニ・リビシの話
  • 町山:
    もう一つのサプライズは、もちろん撮影監督のジョヴァンニ・リビシ(『プライベート・ライアン』『アバター』で知られる俳優)です。俳優である彼はなぜ、カメラマンとしてこのプロジェクトに関わるようになったのでしょうか?
  • 監督:
    たしか、ジョヴァンニと僕はASCアワードで出会いました。当時コダック映画用フィルム部門を運営していたスティーブ・ベラミーという友人が僕たちをそこに招待してくれたんです。僕たちは初対面でしたが、同じテーブルで話をしたんです。確か6、7年前のことだったと思います。
    そして、あなたの大ファンだ、僕の映画に出てくれないかって誘いました。すると彼は、演技は大好きだけど、演技よりも撮影技術に興味があると言い、彼のスタジオに招待してくれて、今までに手がけてきた作品を見せてくれたんです。
    本当に素晴らしいものでした。それで、一緒に映画を作ろうと決めたんです。ええと、それから覚えていませんが1週間後か、1年後か、もしかしたら2年後だったかもしれません。僕たちは友達になりました。
    夜に同じ映画を見ながら、メッセージをやり取りしたり、二人とも映画が大好きでした。
    そして、この映画の脚本を書き、彼に送ったんです。この時、お互いにこれが一緒にやるべき映画だと確信したと思います。
  • 町山:
    なるほど。レンズやカメラなどの機材はどうしたんですか?
  • 監督:
    ジョヴァンニの設備は充実していて、機材もたくさん持っていました。カメラもレンズもたくさん、それにフィルムスキャナーも持っています。
    この映画をかなりの低予算で作ろうとしたとき、ジョヴァンニが予算に合わせて機材をたくさん持ってきてくれると言ってくれたんです。映画のほとんどは、彼の会社であるステラスコープのカメラで撮影しました
  • 町山:
    それはすごい。『ストレンジ・ダーリン』はレンズの選択が本当に素晴らしくて、特にモーテルのシーンでジョヴァンニが使ったのはスプリット・フォーカス・ディオプター・レンズ(レンズの左右で焦点距離が違うレンズ)じゃないですか?
  • 監督:
    ええ、深いフォーカスの画面にしたかったんです。背景のものと手前のものにどちらにもピントが合うようにね。
    ワイドレンズで深いフォーカスを得る(パンフォーカス)のために光量が必要だったので苦労しました。映画全体を、60年代の古い映画、60年代のイギリス映画『召使』やケン・ラッセル監督の『肉体の悪魔』のように見せたかったんです。
  • 町山:
    『肉体の悪魔』はクレイジーな映画ですよね!
  • 監督:
    そう、あの映画は大好きで何回も観てますけど、あんなルックにしたかったんです。でも制作途中で予算をカットされてしまって、モーテルのシーンは予定していた場所とは違う場所で撮影するはめになって。
    ギリギリの状況だったので本当に最悪でした。撮影現場になったモーテルは天井が低すぎて、自然なディープフォーカスに必要な光量を得るために十分なスペースがなかったんです。最終的には照明で苦労してうまくいきましたが。
    モーテルのシーンは大好きなんだけど、30ミリの広角レンズの代わりに100ミリを使うことになったんです。そこはヒッチコックのようなディープフォーカスにしたくて。そこで、スプリット・フィールド・ディオプターを装着し、レンズを左右に分割しました。こうして多くの人が最も話題にするあのショットができたんです。
  • 町山:
    素晴らしいショットでした。
  • 監督:
    ありがとう。ジョヴァンニに伝えておきます。
  • 町山:
    ありがとう(笑)。
構成について
  • 町山:
    では、構造について話しましょう。この映画は、構成がとてもクレイジーですよね。きっと、プロデューサーや出資者は普通の構成、時系列に沿ったような映画にしたがったんだと思うんですが
  • 監督:
    ええ、そうでした。
  • 町山:
    その後、どうなったんですか?
  • 監督:
    僕がスタジオに売った脚本は映画のとおりのものでした。つまり、チャプターが前後に入り組んだ状態の。出資者たちは完成して初めて映画を観たんだけど僕の編集版はあまり気に入らなかった。あまりに分かりにくいと。そして彼らは僕に時系列どおりに整理するよう頼みました。実は、僕の知らないところで別の編集者に整理させていたようですが、その編集版はとてもひどいものでした。
    それで、僕はスタジオの責任者に訴えたんです、僕の計画通りの構成にしてもらえないかと。それでも観客は理解してくれるはずだと保障したんです。そして僕は、時系列をシャッフルした映画の例をあげました。『羅生門』や『21グラム』、『パルプ・フィクション』など、今まで何度も何度も、繰り返されてきているんです。『メメント』だってそうです。
    スタジオの責任者は快く耳を傾けてくれましたが、それでもうまくいくとは思わなかったみたいでした。
    でも、彼は僕に一般観客を招いてのテスト上映を許可してくれました。通常、監督たちはテスト上映を怖がるし、僕もそうでした。挑発的なものを作った場合、無作為で選ばれたテスト観客にアピールできるとは限らないので。
    でも、テスト上映はとてもとてもうまくいって、上映が終わると、スタジオの責任者であるビル・ブロックが電話してきて僕にファイナル・カットを任せると言ったんです。彼はとても親切で、最終的にはハッピーエンドでした。
  • 町山:
    よかった。
  • 監督:
    完成した『ストレンジ・ダーリン』は、撮影中にカットされた部分を除けば、僕が意図した通りの映画ですよ。
  • 町山:
    映画館でこの映画を観たけど、観客の反応は熱狂的でしたよ。
  • 監督:
    いいね!映画館で観るにはとても楽しい映画でしょ。
味深いシーンについて
  • 町山:
    観客が最初に笑ったのは、タイトルの後でした。「この映画は6つの章で構成されている」といったそばから第3章が始まる(笑)。彼女がモーテルから脱走するシーンでも笑いが起こりました。ヒロインが「彼は銃を持っている!」と隣の部屋の老人に叫ぶんだけど、「僕もだよ」って銃を見せる(笑)
  • 監督:
    あれは僕の父なんですよ。
  • 町山:
    え、そうなんですか!
  • 監督:
    彼は僕のすべての作品に出ているんだ。次回作にも出演する予定です。でも、この映画の登場人物は、メインの男女2人と他に2、3人しかいないんだけど、父の出番はたとえ小さくても、とてもとても印象的なものにしたかったんだ。だから、気づいてくれて嬉しい。
  • 町山:
    あのシーンはいかにもアメリカっぽいですよね。
  • 監督:
    僕は自分の作品を説明するよりも、観た人々が何を感じたかを聞くのが好きなんです。時には、映画の狙いを誤解する人もいますが、僕はそれについて何も言わない。たとえ誤解されても、受け取り方はその人次第だと思うから。
    とにかくアーティストとしては自作を説明したくはないんだけど、あのシーンでは間違いなく、現在のアメリカ西部や、アメリカの田舎暮らしについての観察です。父のキャラクターは、まさに現在僕たちの国の一部の地域でよく見られるものを体現しています。
  • 町山:
    あのシークエンスは撮影も素晴らしかった。ヒロインがホテルの2階から飛び降りて走って逃げて、音楽はとてもソフトで甘いんだけど、カメラはずっと彼女を追い駈ける、とても長いテイクで。
  • 監督:
    彼女が二階から飛び降りるのをカメラが一緒に追うショットね。 あれは、僕らにとって最もチャレンジングなショットのひとつでした。
    撮影というのは、監督にとって、爽快でもあり、もどかしくもあります。僕はショットのアイデアを思いつくけど、グリップ(カメラを動かす仕事)でもガファー(照明主任)でもカメラオペレーターでもないから。
    監督は、自分の撮りたい絵を知っているけど、それを自ら撮影することはできません。だから監督としてやれることは、実行するために信頼できる最高の人材を雇うこと。それが監督の喜びです。
    現場で撮影を見ているのは、クルーが飛行機を着陸させてくれることを祈るような気分です。そして彼らは、あのシークエンスで素晴らしい仕事をしてくれた。とても難しい撮影でした。
    あのショットは7回くらいやって、半日くらいかかったと思う。ジョヴァンニをはじめとするクルー全員が素晴らしい仕事をしてくれた。とてもエキサイティングな一日だった。
俳優、キャラクターについて
  • 町山:
    素晴らしいショットでした。いい人材を雇いましたね。撮影監督も俳優も。そして、ヒロインのレディ役も素晴らしかった!
  • 監督:
    ウィラ・フィッツジェラルド! 彼女は本当に素晴らしいでしょ。
  • 町山:
    そうですね!レディの正体を知った後でも、観客は彼女を愛さずにはいられない。
  • 監督:
    僕は脚本家としてレディを創造したけど、間違いなく彼女を愛している。彼女についての感情はとても混乱したものだけど、観客にそれに少しでも参加してほしかったんだ。というのも、僕にとっては、キャラクターが白か黒か、善か悪かということは興味ないんだ。その葛藤を観客にも感じてもらいたい。混乱ではなく、葛藤ですね。登場人物それぞれに愛すべき点があるけれど同時に、彼らは非常に欠陥のある関係の中で、非常に欠陥のある個人でもある、という感じです。
  • 町山:
    この映画はラブストーリーとも呼べるでしょうか?
  • 監督:
    そう思います。悲劇的なラブストーリーだけど。主演のウィラ・フィッツジェラルドとカイル・ガルナーと話したのは2人の人間のリアルな感情や人間関係の様々な段階をどう乗り越えていくか、そして、映画ではそれが明らかにひどく間違った方向へ進んでいくんですが。ハートブレイキングな方向へね。
楽曲について
  • 町山:
    そのエモーショナルで複雑な物語を助けているのが音楽と歌だと思います。この映画は素晴らしい才能の集まりですが、特に全編で歌を歌ったZ・バーグは最高です。
  • 監督:
    Z・バーグは、僕の創作活動において本当に特別な存在です。彼女は、僕と意見が合う良き友人です。趣味が合うんです。この作品を書いていた時彼女とは知り合って数年たっていました、僕は彼女の音楽が大好きでしたし、彼女も僕の最初の映画を気に入ってくれて、こういうことを一緒にやろうって話もしていました。それで『ストレンジ・ダーリン』の脚本を書き上げた時に彼女に送ったんです。脚本の中に彼女の歌を記載したから。
    モーテルの部屋でドラッグをやっている時に流れる曲です。あの曲は、この映画のために書かれたものではなくてZ・バーグのアルバムに収録されていた曲なんです。その曲を脚本に書き入れて、彼女に「映画は気に入ってもらえますか?あなたの曲の使用許諾をもらえますか?」と聞いたら、「映画のために全部の曲を書きたい」って言ってくれたんです。
    作曲家や映画監督、一緒に仕事をする人は、どの部門の責任者であろうと、たいていはたくさんの指示を出して、何度もやり取りをしながら、作品を作っていく。なので、彼女とこの映画の生命線みたいなものについて話し合いました。最初に彼女に言ったのは、「あなたの音楽はどれも素晴らしいけど、この映画の曲は、すごく悲しく、すごく美しい感じにしてほしい」ということです。
    レナード・コーエンとジュリー・クルーズみたいな感じ。そこにZ・バーグを加えてほしいと言いました。それで彼女は曲を書き、全部僕に送ってくれたんです。
    まさにあのシーンに求めていたものでした。本当に素晴らしかった。今まで経験した中である意味で一番簡単なコラボレーションでした。本当に素晴らしかったです。これからも一緒に映画を作る予定です。
  • 町山:
    Z・バーグがカバーした「Love Hurts」は、ジョークみたいに聞こえるかもしれませんが、まさにこの物語のテーマですね。彼女の歌声、本当に素晴らしいです。
  • 監督:
    不思議なんだけど、あの曲は時々頭に浮かんできてたんです。エミルー・ハリスとグラム・パーソンズの古いバージョンの「Love Hurts」があるんだけど、これが本当に好きで。
    一番好きな曲というわけではないんですけど、すごく気に入っていて、ある日この曲を聴いていたら、『ストレンジ・ダーリン』の冒頭のイメージが浮かんだんです。「ああ、これだ、これだ」って。
    変だなって思いました。あのイメージには「Love Hurts」がどうしても入らなきゃいけないのに、「Love Hurts」は別に僕の好きな曲でもない。
    タイミングがたまたま重なっただけなのかもしれない。だから、あの歌を振り払おうともしたんです。もっと思い入れのある曲やオリジナル曲を使おうと。でも結局その気持ちが消えなかった。
    それで、Z・バーグに送って、「もし許可がおりれば、映画のためにこの曲をカバーしてほしい」って言ったんです。するとZ・バーグは「Love Hurts」が全然好きじゃなくて(笑)。でも僕は彼女のこの曲が大好きです。だって、この曲は絶対に映画に欠かせないから。歌詞も、すべてが完璧で、映画にぴったりだったんです。ちょっと鼻につくけど、そんなの関係ないと思ってます。
ところで...
  • 町山:
    ところで、家業はお化け屋敷だって聞いたんですけど。本当ですか?
  • 監督:
    本当なんです。父が90年代にラスベガスでお化け屋敷の会社を始めたんだ。僕はその中で育ったんだ。人を怖がらせる方法を学んだり、高校や中学の時に友達と役者をやったりして、最高でしたよ。
    そう、だからハロウィンは間違いなく僕たち家族にとって一番好きな祝日なんです。
  • 町山:
    親の仕事がお化け屋敷なんて、子どもの夢ですね。
  • 監督:
    年を取ってからは、町を離れてしばらく過ごしました。他のこと、自分のやりたいことをやろうと決めて。
    歳を重ね何年か経って、懐かしくなってラスベガスに戻ったんです。ここ20年近くはロサンゼルスに住んでいたのですが、ハロウィンの日にラスベガスに遊びに行きました。そして父に言ったんだ、やっぱり、この業界で働きたいと。それが15年前のことです。
    それで、父と僕はパートナーを組んで、ネバダ州で初めてのR指定の大人向けお化け屋敷をデザインしました。「地獄の門」っていう名前です。僕がそのアイデアを思いついて、父と一緒に設計してね。それ以来、お化け屋敷のデザインは全部一緒にやっています。今は母はチケット売り場で働き、父と僕で経営しています。
    まさに家族事業なんです。そして、本当に優秀なマネージャーのチームがいて、彼らが運営してくれています。ここ2~3年間は、僕は少し離れてるけど。映画撮影のため、常に施設にいることができなくて。でも、これは本当に、うちの家族にとってハロウィンを祝う唯一の方法なのです。
  • 町山:
    うらやましいですね。
  • 監督:
    「Freakling Bros Horror Shows」といいます。もし、この話を聞いたり読んだりしている人が10月にラスベガスに来るなら、ぜひ遊びに来てください。
  • 町山:
    僕も行きたいですよ
  • 監督:
    ぜひ見に来てください。きっと気に入ると思いますよ。VIP待遇でおもてなししますよ。
  • 町山:
    ありがとう! 僕の名前を覚えておいてくださいね。
  • 監督:
    絶対忘れませんよ。
今後の活動/日本での公開について
  • 町山:
    そろそろ時間がきてしまったので、最後の質問になりそうです。この映画を撮影してからどんな仕事をしてきましたか?予定している次のプロジェクトは何ですか?
  • 監督:
    フランシス・ローレンス監督のために脚本を書いたんです。彼はご存知の通り、『ハンガー・ゲーム』の監督で、彼の作品の中で一番好きなのは『レッド・スパロー』です。今度はスティーヴン・キングの小説『死のロングウォーク』の映画化なんです。
  • 町山:
    本当ですか? あれは『ハンガー・ゲーム』の元ネタですよね。
  • 監督:
    (笑)。似てるけど、違いますよ。その長編版をライオンズゲートのために書いたんですが、アメリカでは9月に劇場公開される予定です。
    それから、J.J.エイブラムスがプロデュースし、ブリー・ラーソンが主演する映画も企画中です。
    『フェイルセーフ』というタイトルで、今脚本を書き直していて、準備ができたら監督をする予定です。それから、もう一つオリジナルの脚本があっていつ撮影できるか検討中です。
    2、3作続けて監督したいと思っていて、というのも最初の映画と2作目の間に大きな空白期間があったからなんです。ほぼ7年ぶりだったと思う。だから今回は、この映画を撮影して8月にアメリカで公開され、その後たくさんの脚本を書いていました。そして、秋か冬には何かの制作に入る予定です。
    そしてできればその後、来年の夏にはまた別の作品の制作に入りたいと思っています。だから、失われた時間を埋め合わせるために、何本か映画を監督するつもりです。
  • 町山:
    その通りになると良いですね!
  • 監督:
    そうですね。僕は日本映画の影響をすごく受けているから、『ストレンジ・ダーリン』は日本で上映されるべきだと思っていました。興行が上手くいくと嬉しいな。
  • 町山:
    きっと大丈夫。
  • 監督:
    僕が作るものは何でも、日本の観客にぴったり合うと思う。そう願ってます。だって、日本の観客は他のどの国よりも僕にとって大切な存在だから。日本で公開できることにすごく興奮してます
  • 町山:
    ええ。だって、日本は『羅生門』の国だから。
  • 監督:
    日本には素晴らしい映画や影響力のある映画が数多くあります。そのため、僕たちの作品が日本で公開すると聞いた時、非常に興奮しました。『ストレンジ・ダーリン』について話すのは久しぶりなので、ちょっと興奮しました。アメリカでの公開からけっこう経ってるから。
  • 町山:
    いつか日本に来てくださいね。
  • 監督:
    ぜひ行きたいです。近くには行ったことがあるんですが、まだ行ったことがないんです。新作のプレミアとかで行けたらいいなと思っています。本当にそうしたい。
  • 町山:
    日本は不思議な国だからきっと気に入ると思いますよ。
  • 監督:
    素晴らしいと聞いています。僕の編集者がちょうど日本から帰ってきたばかりなんです。
    彼は数週間日本にいましたが、今は日本に引っ越したいと言っています。「次の作品を日本で編集したい」と言っていて、素晴らしい経験だったと言っていました。
  • 町山:
    もしかしたら日本で映画を撮りたくなるかもしれませんよ?
  • 監督:
    ええ、いいんじゃない?今すぐに日本に行っても悪くないタイミングかも。
  • 町山:
    ありがとうございました!
  • 監督:
    本当にありがとうございます。
  • 町山:
    あなたの映画が大好きです。傑作です。