映画 ストレンジ・ダーリン レビュー
映画 ストレンジ・ダーリン レビュー スマホ用 映画 ストレンジ・ダーリン イントロダクション背景

INTRODUCTION

映画 ストレンジ・ダーリン イントロダクション見出し この夜、私は悪魔をみたー
『ストレンジ・ダーリン』(原題「STRANGE DARLING」)は 2023 年 Fantastic Fest でプレミア上映後、Rotten tomatoes の批評家スコアで全員から 100% FRESH!!を獲得。2024 年 8 月にアメリカで公開されてからも高評価が続き、スティーヴン・キングは「巧妙な傑作」とコメントし、『エクソシスト』次回作の新監督でもあるマイク・フラナガンは「崇高なまでに素晴らしい」と大絶賛。『コンスタンティン』 や 『ハンガー・ゲーム』シリーズ監督のフランシス・ローレンスは「一瞬の名作は、秘密が台無しになる前に観る」といち早く本作を観ることを勧めている。この他、「完全な勝利」(IndieWire)、「2024 年最高のスリラー」(InSession Film)と各メディアでも称賛された。日本国内においては、アメリカ在住で映画評論家の町山智浩も本作へ「“この映画は6部構成”という字幕で始まり、次の字幕は“第3部”。え?観客の予想を全部裏切っていく。ほとんど1分おきに!」とコメントを残した。

物語は全六章から構成されており、シリアルキラーによる事件の恐怖が各地で広がる中、とある男女が出会い、モーテルで一夜を過ごすことをきっかけに展開していく。作品が高く評価されている最大の魅力は“非線形によって生み出された巧みなストーリーテリング”にある。時系列を操作することで、観客の興味を引き、予測できない展開へと連れていく!!
逃げる女、追う男。
全六章に仕掛けられたワナが惑わす、
新感覚のチャプター•ツイスト•
スリラーが誕生した。
監督・脚本を務めるのは、本作『ストレンジ・ダーリン』で注目を集め、スティーヴン・キング原作「死のロングウォーク」の映画化作品の脚本も務める JT・モルナー。主人公の“レディ”役には、「ジャック・リーチャー -正義のアウトロー」(22)に出演し、TVドラマ版「スクリーム」(15)では主演を務めたウィラ・フィッツジェラルド。“デーモン”役には、ホラー映画『Smile スマイル』(22)での演技が高く評価されているカイル・ガルナー。どちらも本作ではキャラクターの心理に迫った緊迫感をリアルに表現し VARIETY では「素晴らしい演技」と評された。

STORY

シリアルキラーが町を恐怖に陥れる中、モーテルの前に停まった一台の車。
中には、今夜出会ったばかりの男女の姿が。
「あなたは、シリアルキラーなの?」「まさか」
一夜の過ちが、予測できない凶悪な連続殺人へのスパイラルとなっていく。
あなたは、愛の罠に落ちる。

CHAPTER

映画 ストレンジ・ダーリン チャプター
映画 ストレンジ・ダーリン チャプター スマホ用

COMMENT

綾辻行人(作家)
実に巧緻かつ大胆な設計と演出! 往年のデヴィッド・リンチ監督作品を思い出させる怪しい香りにも心地好く酔いながら、最初から最後まで余すところなく楽しめました。オススメ、です。
有栖川有栖(作家)
どうしてこうなったのか、わからないのが怖い。
6つのピースが嵌まって事態の全容が見えたら、怖さの質が変わってさらに恐ろしい。
予想外の幕切れは、悪夢の花が開くかのよう。
いまむー(お絵描きツイッタラー)
ほぉなるほど、そういう映画ね!と観進めたかと思いきや『!?』どういう事状態へ。
それが時折起こり、とんでもないツイストをかましてくる...!!
この巧みな構成が秀逸であり恐ろしい...
正直、見事すぎて唸った。観てる側と見せてる側で初めてこの映画は完成する。
宇垣美里(フリーアナウンサー・俳優)
シャッフルされた全6章で語られる
逃げる女と追う男の真相。
その全貌が明らかになるにつれ、
浮かび上がる己の偏見に狼狽し、思わず恐怖。
狂気を増長する鮮やかな色彩が、今も目に焼き付いて離れない。
なのにどうしてだろう、その真実にどこか胸のすくような思いがした。
尾﨑一男(映画評論・映画史家)
ベッドを共にした相手が、最凶シリアルキラーだった—!! そんな設定に始まり、映画は予想もしなかった殺人鬼の正体を、時系列を解体してパズルゲームのように解き明かしていく。ノンリニアな構成が誘導する、スリラーの新領域。みんな思考を柔軟にして警戒するがいい。連続殺人ショッカーの偉大なクラシック『悪魔のいけにえ』(1974年)をなぞったオープニングからして、「ホラーはこうだ」という固定観念の裏をかくための罠だ!
小島秀夫(ゲームクリエイター)
これにはヤラれた!「ハイテンション(2003)」x「パルプ・フィクション(1994)」かと思いきや、この“6章宣言”の35ミリの“罠”に見事にハマってしまった。いや、“沼”にハマってしまった!新しい“悪魔”的才能とホラー界の新“レディ”誕生だ!
末廣末蔵(ジャンル映画大好きツイッタラー)
ザラ付いたフィルム画面に映し出される”逃げる女”と”追う男”...どうやら尋常じゃないご様子?...どころじゃない!完全”ネジのぶっ飛んだ”全 6 章が狂ったままにシャッフルされて、少しずつ輪郭を現す驚愕の”真実”に頭クラクラ、理性グラグラ、欲望ワクワクで揺さぶられまくりの97 分。見事なレトリックに騙される”快感”と、そして叩き付けられる”背徳感”が不穏に共存...と言う最高の映画体験!予定調和に血の混じった唾を吐いて極上の” 恋愛地獄変”に耽溺だ!
高橋諭治(映画ライター)
プロットの構造、人物造型の両面においてシリアルキラー映画の概念を更新した本作は、観る者の先入観を根こそぎ覆すサプライズの創出に成功した。おまけに、白昼夢のごときこのスリラーには、無慈悲な“死”のみならず、不可解で鮮烈な“生”が刻み込まれている。恐ろしさと美しさ、獰猛さと繊細さが入り混じった映像世界に、もはや感嘆せずにいられない。
DIZ(映画アクティビスト)
どれほど他人を“わかったつもり”で見ているだろう?
『ストレンジ・ダーリン』は、その思い込みを次々と容赦なく暴き出す新体験スリラー。観終えた時、あなたの目に映る世界はもう元には戻らないだろう。
⼈間⾷べ⾷べカエル(人喰いツイッタラー)
新たな章に移るたびに見え方が大きく変わっていく。トリッキーだが軸のブレない面白さ。これでもかと手のひらで踊らされる。章立ての構成を最も有効活用している映画かもしれない。
ビニールタッキー(映画宣伝ウォッチャー)
逃げる女と追う男。一見シンプルな物語だがピースを繋ぎ合わせると奇妙な人間模様が浮かび上がる。懐かしくて新しい、危険で魅力的、そして予測不能で大胆不敵!完全にやられた!
ホラー映画取締役
これは不意打ち!!「追う男と逃げる女」よくある映画のシナリオは仕掛けの始まり。「定番」は開始5分で裏切られ、6章仕立ての構成がシャッフルしながら襲ってくる。気持ちよくこの物語に身を委ねて、どんな悪魔を見るのかは、映画館でのお楽しみ。
町山智浩(映画評論家)
「この映画は6部構成」という字幕で始まり、次の字幕は「第3部」。え?
このパズルを解こうとして観客の頭はフル回転する。でも『ストレンジ・ダーリン』は観客の予想を全部裏切っていく。ほとんど1分おきに!
美しくも哀れなエンディングには不思議な達成感すらある。さすがスティーヴン・キングも認めた傑作!
宮岡太郎(映画監督/映画レビュアー)
インディペンデントスピリットに溢れた快作! 全6章がちぐはぐにシャッフルされ展開される謎脚本と見せかけて、この仕掛けが中盤以降に見事に効いてくるので舌を巻く。タランティーノ、デパルマあたりからの影響も如実で、90年代風味が香るバイオレンスも魅力的。監督の意欲がほとばしる挑戦的な野心作である。
吉田恵輔(映画監督)
始まった瞬間から普通じゃない映画。真新しさとエッジの効いた90年代映画の懐かしさが融合。自由な発想とやりたい放題。羨ましい
※50音順・敬称略

PRODUCTION NOTE

企画のはじまり
脚本・監督の JT・モルナーにとって、『ストレンジ・ダーリン』はひとつのイメージから始まった。「被害者である女性が、病院のスクラブを着て、苦痛に満ちた表情で森の中を走っている。黒を背景にした鮮やかで飽和した赤、深いエレクトリックブルー、森の自然な緑が見えた。これらがこの映画の色になることは分かっていたけれど、どうフィットするかは分からなかった。その時はまだね」と彼は語る。彼が思い描いた印象的なイメージと原色のパレットが、トラウマ的な経験のような物語の出発地点であった。同時に、初恋や潜在的なロマンスも含む妄想も含んでいる。「それを探求するのは面白いと思ったんだ」と彼は話した。

「この映画は、脚本を書き始める前から 6 つの章で構想していた。最初に思いついたのは真ん中の章。次に思い浮かんだのは冒頭部分。そして数週間後エンディング。この映画は初めから直線的な物語ではなく、後から時系列をいじったわけでもない。章が順番通りに再生されないことは必然的に決まっていて、私のひらめいた通りの順序で再生しなければ、物語が成り立たないことも分かっていた」。“レディ”のイメージが彼の頭の中に明確にあったことで、脚本の執筆は一気に進んだ。「どのように幕を開け、物語がどこへ向かっていくのかはわかっていた。今までにないほどの早さで書き終えた」いつもの脚本執筆では、彼の初稿はたいてい 150 ページ以上に及ぶ。

しかし、彼はこの映画はこれまでとは違うものになると確信していた。彼はこの映画をミニマリズムの実践にしたかった。シーンが息づくように、ストーリーにパンチとインパクトをつけ、90 ページ以内に収めることを目指した。彼はお気に入りのロックバンドのひとつであるピクシーズの音楽を参考に、大きな音の節と静かなメロディアスな節を交互に繰り返すという彼らの哲学を活用している。『ストレンジ・ダーリン』では、恐ろしくぞっとするような、残忍な、そして非常に強烈な瞬間が、甘さ、優しい親密さ、おとぎ話のような美しさと絡み合っている。この “ラウド・クワイエット・ラウド”なアプローチの基礎は脚本にあったが、それを実現するためには長年の信頼できる協力者である編集者のクリストファー・ベルが不可欠だった。J.T.は、クリストファーが撮影前に脚本を読むことができるようにし、事前に編集マップやメモを作成できるようにした。

J.T.はショービジネスにコネクションがあった叔母が J.T.の創作の導火線に火をつけたと言う。叔母と幼い頃の J.T.はあらゆる種類の映画への愛を分かち合っていた。彼が中学生になる頃には、ロマン・ポランスキー、セルゲイ・パラジャーノフ、フェデリコ・フェリーニ、イングマール・ベルイマンの映画も必ず観るようにしていた。「私はすでに映画が好きでしたが、これらの映画はすべてを開放し、芸術としての映画の無限の可能性を初めて私に感じさせてくれました。映画製作者として、私たちが扱うことのできる題材のなんと幅広いことでしょう」と語る。

J.T.は、熱心なホラーファン(彼が子供の頃、父親とその兄弟が幽霊屋敷イベントであるフリークリング・ブラザーズ・ホラー・ショーを設立し、現在も運営中)とアート系映画ファンの両方の視点で、この白紙のキャンバスにアプローチした。さらに、道徳的な曖昧さを探究し、典型的な考え方を覆したいという彼の願望が加わった。

また、J.T.が小さい頃、週末になると母親がレンタルビデオ屋に連れて行ってくれた。彼の母親は、R 指定の映画を借りることを許さず、もっとポジティブな内容の映画を見せようとした。彼は「『ヤング・フランケンシュタ4イン』、『E.T.』、『オズの魔法使い』、『ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど』といった映画を一緒に観たことを覚えている。どの作品も大好きだったけど、幼い頃は大人向けの R 指定の映画が観られないのが不満だった。今では、幅広い映画に触れることができたことに価値があると感じている。母は魔法と楽観主義をもたらし、叔母は前衛的なものに触れさせてくれた。両方の視点を持つことは、私の映画作家としての成長にとってかけがえのないものだった。私の人生に影響を与えた女性たちのおかげで、私はよく女性の視点で物事を考えるようになった」と語る。J.T.は映画の創作過程を通して、このプロジェクトの主役である“女性”に意識が集中していることに気づく。

J.T.は『ストレンジ・ダーリン』を構想していたとき、ヒロインに魅了されていた。『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーティスのような、追い詰められて苦しんでいる女性だ。しかし、本作ではその定型表現をさらに掘り下げて、異なる種類のストーリーを作ろうとした。本作は多くの映画ではクライマックスとなるような、女性が森の中を夢中で走るところから始まる。彼女の恐怖と悲しみと複雑さの美しい瞬間を捉えている。観客は、彼女が誰なのか、なぜ走っているのか、彼女の痛みと悲しみにつて詮索しなければならない。他の映画で殺人鬼に追われる女性たちと何が違うのだろうか?彼女は彼が最初に思い描いたキャラクターであり、すべては彼女のために行わなければならなかった。 “レディ”と呼ばれる彼女は名もなき一人の“女性”だが、この映画は典型や期待、アイデンティティについての映画であり、J.T.は、登場人物たちにその典型を象徴する名前を与えた。それはまた、このおとぎ話的で超現実的な物語にも適しており、常に現実から一歩だけ離れた、少し夢のような感覚を保っている。

脚本が完成すると、J.T.はいつものプロセスに従って妻と両親の反応をみた後、次に脚本を見せたのが俳優のジョヴァンニ・リビシだった。彼は撮影監督兼プロデューサーとしてこの作品に参加することになる。ふたりは何年も前からの知り合いで、フィルム撮影への愛を通じて親交を深めた。J.T.とジョヴァンニは製作会社が決まる前から、1 年をかけてブライアン・デ・パルマやデヴィッド・リンチ、デヴィッド・クローネンバーグの映画における広角レンズや特定の色について研究を重ねた。J.T.は「私たちは、この映画の見た目を、独特な雰囲気にしたかった。視覚的な要素を調整することがとても重要だった。結局のところ、映画は視覚的なメディア。私にとってはそこから始まり、そこから構築していく必要があった」と語る。

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