二宮プロデューサー・大﨑プロデューサー オフィシャルインタビュー

——映画『カラオケ行こ!』の綾野さんのキャスティングについて教えてください。

「カラオケ行こ!」の映画化の権利をお預かりして、最も信頼している俳優の綾野さんに真っ先にお話をしました。作品の方向性は、狂児のキャラクターをどの俳優が演じるかで大きく影響されると考え、ミステリアスな魅力と同時に実体をつかみにくい幻のようなキャラクターを、原作を尊重しつつも、映画として新たな魅力を軽やかに表現できる俳優として、綾野さんにオファーをしました。綾野さんはいつも通り、和山やま先生の世界に入り、最大の敬意と強いストイックな覚悟で臨んでくれました。(二宮P)

——どのような経緯で、脚本の野木亜紀子先生と監督の山下敦弘さんにオファーされたのでしょうか?

脚本については、綾野さんと様々な意見交換をし、和山先生の品のある笑いのリズムと、ありえない二人の距離感を表現する難しさを共有しました。この繊細な作品を最も高い解像度で表現してくれる脚本家は野木さん以外にいないという意見が一致し、野木さんにオファーさせていただきました。オファー後に作品を読まれた野木さんは「傑作だよね!」と絶賛されていましたが、同時に「映画化は難しい」という認識もされていました。
監督については、野木さんと綾野さんと共に話し合いました。和山ワールドを具現化する難しさから何名かの候補の監督が挙がりましたが、山下監督のキャリアや人間の描写、笑いの質感が本作に最も合うと感じ、オファーさせていただきました。山下監督自身も、綾野さんと以前からお仕事をしたいと希望されていたこともあり、また野木さんへの絶大な信頼もあったことで、ご快諾いただきました。(二宮P)

——撮影現場での綾野さんと齋藤さんの様子を教えてください。

撮影中、実年齢が同じで変声期を迎えていたこともありますが、齋藤潤と岡聡実が重なる部分があり、彼が日々悩みながらも成長していく姿を、誰よりも近くで優しく見守っていたのが綾野さんでした。綾野さんは「尊い瞬間に立ち会っている」と撮影現場でよく口にしていました。齋藤くんは周りがほぼ大人ばかりで、日々プレッシャーを感じていたと思いますが、好奇心と向上心を持って表現者として必死に立ち向かう姿は、年齢に関係なく尊敬すべきものだと感じました。(二宮P)

――劇伴や、劇中で使用されている合唱曲について教えてください。

音楽プロデューサーの北原京子さんからの推薦で世武裕子さんに劇伴を依頼しました。狂児と聡実のテーマで根幹となる一曲を基に、劇中では狂児と聡実の2人だけのシーンが多いことから、その曲にさまざまなアレンジを加えて2人の距離感や心情を表現しています。(二宮P)

合唱曲も劇伴と同様に重要でした。実際に監督や野木さん、音楽プロデューサーの北原京子さんとともに都の合唱コンクールに取材に行った際、中学生が歌う楽曲の難易度に驚きました。映画の楽曲を選定する上で、あまりにも難しい楽曲は観客のみなさんにとって耳なじみがないでしょうし、逆に誰もが歌えるような合唱曲にすると、森丘中が合唱の強豪校であることが伝わりにくいという課題がありました。そこで、野木さんの脚本のテーマに基づいて、音楽プロデューサーの北原さんを中心に楽曲の選定を進めていただきました。中盤のシーンでは野木さんの脚本で「愛の歌(合唱)が聞こえてくる」とあったので、愛にまつわる楽曲で「心の瞳」を。この楽曲は坂本九さんが歌われていて、後に合唱曲として広まっていった楽曲です。「影絵」と「その木々は緑」に関しては合唱曲としてある程度スタンダードでありながら、難易度もあり、聡実のソプラノのパートの印象も残すために混声四部合唱で表現できる楽曲で選んでいただきました。特に、冒頭で流れる「影絵」は狂児と聡実の関係性も視野に置きながら象徴的な歌になったのではと思っています。(大﨑P)

――劇中に登場する合唱部のみなさんがとてもリアルで印象的でした。

映画で展開される聡実君の物語において、合唱部はとても重要な役割を担っていました。野木さんとのシナハン(シナリオハンティング、脚本を書くための取材)では、主題歌にも携わっていただいた府中市立府中第四中学校合唱部(23年全日本合唱コンクール最優秀賞!)を取材し、森丘中学合唱部の物語を構築していただきました。制作陣でもいくつか他の合唱部を取材して、音楽室の張り紙や部の雰囲気など細かいところを作っていきました。また、合唱部の生徒には杉並児童合唱団のメンバーをキャスティングし、俳優たちとの組み合わせで、リアルな合唱部の雰囲気を表現することに注力しました。(大﨑P)

――ヤクザのカラオケシーンで使用されている曲はどのように選定したのでしょうか?

原作の聡実のリアクションを参考にし、一般的に親しまれている楽曲を選びました。スタッフ全員がそれぞれ好きな十八番について話し合い、最終的には監督が決定していきました。銀次役の吉永秀平さんが歌う「月のあかり」だけは監督が直接決定し、吉永さんが普段歌っているスタイルのまま収録されています。その部分だけがリアルな演出です。他の楽曲については、皆さんが実力派なので上手く仕上がったと思います。多分。(二宮P)

作品の最も重要な要素の一つである「カラオケ」に関しては、JOYSOUNDさんに全面協力いただきました。ヤクザに何を歌ってもらうか検討する際、監督とは時代的にやや古い楽曲を中心に当初は考えていましたが、新旧の楽曲を組み合わせることで観客が楽しめ、ヤクザの個性も引き立てられるだろうということで、物語の設定の2019年に合わせて、2019年のカラオケランキングや過去のランキングを基に、聡実のリアクションに合う楽曲を選び音楽プロデューサー北原さんと監督と決定していきました。何となくその時点で唐田に「白日」を歌ってもらうことはプロデューサー陣から推していましたね(笑)。(大﨑P)

――特に思い入れのあるシーンはありますか?

映画の中で進行する場面は、主にカラオケボックスなどの比較的狭い空間が中心ですが、屋上のシーンは唯一と言ってもいいほど広い絵になっています。エンディングにも繋がる映画オリジナルの重要な場面。狂児が珍しくサラリと芯をついた話をしながら、聡実の煮詰まった心の澱が解けていく。この2人の瞬間を捉えるために、太陽の光の当たり具合にもこだわり、2日間かけて納得のいくまでシーンを撮りきりました。(二宮P)

スナックカツ子で聡実が最後に歌うシーン。この瞬間は、聡実の感情を含めて、映画ならではの絵と音で表現されるものです。監督とスタッフ全員が、このシーンに向けてどうエモーショナルに仕上げるかを考えながら撮影していたと思います。実際には、このシーンはクランクアップ直前に撮影され、齋藤さんが練習を重ねた成果が結実した瞬間でもありますので、映画館のスクリーンでぜひ観ていただきたいと思います。(大﨑P)

――最後に、映画『カラオケ行こ!』ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

新しくて瑞々しい青春映画として感じていただけると思います。ヤクザと中学生というあり得ない2人の交流という斬新な設定がフォーカスされがちですが、この映画は思春期特有の複雑で繊細な心の揺れを聡実くんから感じながら、風のように吹き抜けていく狂児によって、今は忘れてしまったけれどもその時は確かにあったものを気づかせてくれます。それは映画を観ていただく方々それぞれにとって、色々な思いが詰まった大切なものなのではないでしょうか。この映画で聡実くんが最後にフッと言うセリフには、我々の思いが詰まっています。小さなお話なのですが、大きなスクリーンでご覧いただくことでその気づきに至ると思いますので、ぜひ劇場でご覧いただけると幸いです。(二宮P)

まずは既に鑑賞いただいたお客様の声を聴いて、皆様が本作を楽しんで頂けていること、とてもうれしく思っています。和山先生の素晴らしい原作の世界観へのリスペクトを大切にしながら、野木さんが映画として素晴らしい脚本にしていただき、綾野さん、齋藤さんはじめとしたキャストの皆さんがそのキャラクターを見事に生きてくれて、山下監督が映画としてまとめ上げてくれました。あの時、あの瞬間にしか撮れなかった齋藤潤さんと聡実の姿を狂児と共に見つめながら、本当に皆で一丸となって作り上げた作品です。見て頂いたお客様の中で、これからも狂児と聡実のふたりが生き続けてもらえたら嬉しいです。(大﨑P)