映画『明日の食卓』

2021年 春

菅野美穂 高畑充希 尾野真千子 外川燎 柴崎楓雅 阿久津慶人 他 監督:瀬々敬久 脚本:小川智子 原作:椰月美智子「明日の食卓」(角川文庫刊)製作幹事:WOWOW 配給:KADOKAWA/WOWOW ⓒ2021「明日の食卓」製作委員会

イントロダクション

息子を殺したのは、私ですか—?

石橋ユウ、11歳。
この物語は同じ石橋ユウという名をもつ息子の3人の母親たちの物語。
子育ては大変なこともあるけれど、息子を心から愛している幸せな家庭のはずだった。
けれど――

原作は、2002年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』で作家デビュー後、『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、第23回坪田譲治文学賞を受賞、『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞した椰月美智子による『明日の食卓』。どこにでもいる母と子供たちの、リアルで壮絶な物語。
本作に挑んだのは菅田将暉、小松奈々出演の『糸』や綾野剛主演の『楽園』、そして『8年越しの花嫁 奇跡の実話』を生み出した佐藤健と再びタッグを組んだ『護られなかった者たちへ』の公開が控え、精力的に作品を生み出している瀬々敬久監督
同じ【石橋ユウ】という子供を持ち、住む場所も環境も全く違う母親3人には、豪華女優陣が集結。
『ジーン・ワルツ』(2011年/大谷健太郎監督)以来10年ぶりの映画主演となる菅野美穂が元フリーライターで二人の息子を育てる留美子役に挑み、やんちゃ盛りの息子たちを育てながら仕事復帰を目指す母親をパワフルに演じる。また、シングルマザーで大阪に暮らす加奈には高畑充希。若くして子供を産み、日々非正規の仕事を掛け持ち、時間に追われながらも息子のために健気に生きる姿が心を打つ。そして年下の夫と優等生の息子に囲まれ、一見何不自由なく幸せを手に入れているあすみを尾野真千子が丁寧に演じている。

それぞれの「石橋家」が交錯し、明るく幸せな生活が思いもよらない方向へと向かっていく様は、女優たちのリアリティあふれる演技と、鬼気迫る演技が臨場感をもたらしている。

子を持つ親なら誰もが直面する社会問題を、社会派エンタテインメントの旗手である映画作家・瀬々敬久監督と初タッグとなる菅野美穂、高畑充希、尾野真千子ら素晴らしい女優陣が、観るものの問題意識を喚起しながら、ハラハラドキドキ感とともにクライマックスへと向かわせ、ラストには見事に希望の光を見出してくれる、第一級のエンタテインメントへと昇華する。

ストーリー

同じ「石橋ユウ」という名前の小学3年生の息子を育てる3人の母親たち。

神奈川在住・フリーライターの石橋留美子(菅野美穂)43歳、夫・豊はフリーカメラマン、息子・悠宇10歳。
大阪在住・シングルマザーの石橋加奈(高畑充希)30歳、離婚してアルバイトを掛け持ちする毎日、息子・勇10歳。
静岡在住・専業主婦の石橋あすみ(尾野真千子)36歳、夫・太一は東京に通い勤務するサラリーマン、息子・優10歳。
それぞれが息子の【ユウ】を育てながら忙しく幸せな日々を送っていた。
しかし、些細なことがきっかけで徐々にその生活が崩れていく。
無意識に子どもに向いてしまう苛立ちと怒り。
住む場所も家庭環境も違う【3つの石橋家】の行き着く運命は…?

コメント

菅野美穂さん

私自身が育児中という事もあり、運命を感じる役との出会いでした。留美子を演じながら、子どもへの愛情と、母性の狂気を改めて見つめ直すような気持ちになりました。
瀬々監督の作品に参加させて頂くのは今回が初めてだったのですが、寡黙なお人柄ですが熱い思いでお芝居を受け止めてくださいました。
瀬々組の阿吽の呼吸のスタッフの皆さんのお陰で、集中して取り組む事ができたのだと思います。
毎日抜け殻になるまで撮影をした、という気がします。
高畑充希さん、尾野真千子さんという素晴らしい女優さん達と一緒にこの作品に参加させて頂けてとても幸運に思っています。

プロフィール

1977年生まれ。1993年、『ツインズ教師』(テレビ朝日)の生徒役で女優デビュー。1995年にはNHK連続テレビ小説『走らんか!』の準主役に抜擢、1996年テレビ朝日ドラマ「イグアナの娘」、2000年フジテレビドラマ「愛をください」、2004年フジテレビドラマ「愛し君へ」、2010年日本テレビドラマ「曲げられない女」、2012年フジテレビドラマ「結婚しない」、2016年NHK総合ドラマ「べっぴんさん」、2016年TBSドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人~」、2017年TBSドラマ「監獄のお姫さま」などに出演。映画では、1995年『大失恋。』(大森一樹監督)で映画初出演し、2002年「Dolls(ドールズ)」(北野武監督)、2007年『さくらん』(蜷川実花監督)、2013年『奇跡のリンゴ』(中村義洋監督)などに出演。2014年ディズニー映画『ベイマックス』では声優を務めた。

高畑充希さん

はじめての瀬々組。とてつもなくパワフルな現場で、あれよあれよという間に時間が過ぎてゆきました。1日1日の密度があまりにも濃すぎて、撮影期間の記憶がほとんどありません。笑
でも、スタッフさん達の瀬々監督作品への愛を毎日肌で感じていた事だけは覚えていて、きっとその愛情が、出来上がる映画からも溢れているんだろうなと思います。
自分自身が生まれ育った大阪の、空気とか匂いとかを思い出しながら懐かしみながらこの加奈という役をやらせていただけて、本当に幸せでした。

プロフィール

1991年生まれ。2005年、『山口百恵トリビュートミュージカル プレイバック part2 〜屋上の天使』の出演者オーディションでグランプリを獲得、同舞台でデビューを飾る。以降、舞台から映像まで幅広い作品で活躍。2007年から2012年まで舞台『ピーターパン』で8代目ピーターパン役を務めた。2013年NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』に出演し、演技力と歌唱力を併せ持つ女優として注目を集め、2016年放送NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」ではヒロインを務めた。2020年、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』にて第43回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2021年、テレビ朝日1月期木曜21時ドラマ『にじいろカルテ』の主演を務め、3月からは主演ミュージカル『ウェイトレス』の公演が決定している。

尾野真千子さん

母を演じる事はやはり難しいです。
母の気持ち、子の気持ち、まだいくら考えてもわかりません。
いくら歳をとっても経験者当事者でないとわかりません。
この役を演じて怖くもありました。
でも繋がりとは素敵で美しい大切なものなのですね。

プロフィール

1981年生まれ。1997年の映画『萌の朱雀』(河瀨直美監督)で映画主演デビュー。2007年、主演映画『殯の森』(河瀨直美監督)で、第60回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリを獲得。2009年、ヒロインを演じた広島発地域ドラマ「火の魚」(NHK広島)、2011年、平成23年度NHK連続テレビ小説「カーネーション」(NHK大阪)などに出演。その他映画では08年、原田眞人監督の『クライマーズハイ』や13年橋本一監督の『探偵はBARにいる2』、同年是枝裕和監督の『そして父になる』、15年、呉美保監督の『きみはいい子』など数々の映画に出演。2021年1月には藤井道人監督の『ヤクザと家族』の公開が控えている。

瀬々敬久監督

一見平穏で楽しそうな子育て中の三つの家族がゆっくりと崩壊していく様子を、決して悲観的にならず最後は希望を持って描いている原作にまず惹かれました。
それはどんな家族にも訪れうる悲劇で、他者の身になって想像するという、今の分断化された世界の中で一番必要なテーマだと思えました。
より広い世界観につながる映画にしたい、そう思いました。
3人の母にはこの上ない方たちに集まって貰えました。
菅野美穂さんは実際に子育て中であり、ご自身の経験を生かしてチャーミングなお母さんを演じてくれました。
そしてラストは一線を超えた迫力です。
高畑充希さんが演じるのは大阪のシングルマザー、これも高畑さん自身が大阪出身ということもあり、頑張るオカンを等身大で気丈に演じていただき感動的です。
尾野真千子さんが演じるのは、ちょっとサイコな小学生の母親です。
複雑な性格の彼の暴走を食い止めるには体当たりの魂の叫びしかなく、まさにそこに至っています。
映画の中では、やがてこの三人の姿が微妙に繋がっていきます。
映画ならではのその醍醐味も楽しんでもらえたらと思います。

プロフィール

1960年生まれ。京都大学文学部哲学科に在学中、自主制作映画『ギャングよ、向こうは晴れているか』で注目される。卒業後、『課外授業 暴行』(89)で商業監督デビュー。『MOON CHILD』(03)、『感染列島』(09)などを監督。4時間38分の長尺で仕上げた『ヘヴンズストーリー』(10)がベルリン国際映画祭の批評家連盟賞とNETPAC(最優秀アジア映画)賞を受賞。『アントキノイノチ』(11)は、モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門のイノベーションアワードに輝いた。『64 ロクヨン』2部作(16)では、前編で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。その後も、『最低。』(17)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)、『友罪』(18)、『糸』(20)などの人間ドラマで手腕を振るう。

椰月美智子さん(原作)

『明日の食卓』が映画化されると聞いたとき、これほど映像化にぴったりな小説はないんじゃないかと、自身はじめての映像化に胸が高まりました。
そして、瀬々監督!主役の三人である菅野美穂さん、高畑充希さん、尾野真千子さん!のお名前を耳にし、この映画は成功するに違いないと確信しました。
「三人の母親」と「虐待」は、どのような経緯をたどって、どのような結末になるのでしょうか。
いろいろな意味で問題作となるはずです。期待しかありません。

プロフィール

1970年生まれ。小説家。『十二歳』で第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。07年『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、08年同作品で第23回坪田譲治文学賞をダブル受賞。17年『明日の食卓』で第3回神奈川本大賞受賞。 20年『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞。その他の著書に、『るり姉』『フリン』『恋愛小説』『かっこうの親 もずの子ども』『その青の、その先の、』『消えてなくなっても』『伶也と』『14歳の水平線』『美人のつくり方』『緑のなかで』『つながりの蔵』『さしすせその女たち』『こんぱるいろ、彼方』『純喫茶パオーン』など多数。幼年童話『チョコちゃん』『チョコちゃんときゅうしょく』、絵本『ペーとぼく』もある。中学2年生と小学6年生の男児の母。